混声合唱とピアノのための組曲「みやこわすれ」より
(作詞 野呂昶 作曲 千原英喜)
2.はっか草 野呂 昶 詩
つゆ空にうかぶ
うす緑のちいさな茂み
その中から 煙るように
小さな花が いくつも咲いた
「これははっか草の花」
幼い日 母はその蕾みを手折って
私に言った
「はっか草のような人になりなさい」と
顔を近づけると どの花でもない
きよらかな香りがした
心が引き込まれる 不思議な香りだった
あれから幾十年 私はひたすら生きて
母はもうとっくにこの世を去った
「はっか草のような人になりなさい」
私はついに
そのような人には なれなかったが
その声だけは 今も
私の中で
気高く香っている