混声合唱組曲
心の四季 より
作詩 吉野 弘 作曲 高田 三郎
流 れ
岩が しぶきを あげていた
深みを渡る 馬のよう
青い流れを噛みながら
ひとつところに 阻(はば)まれて
魚(うお)が ひっそり 遡(さかのぼ)る
岩のほとりを 川上へ
強靭(きょうじん)な尾で 水を蹴り
速い流れを 貫いて
岩が しぶきを あげていた
あきらめ知らぬ 馬のよう
魚が するどく 遡る
強靭な尾で 水を蹴り
逆らうにしても それぞれに
精一杯な仕方がある
凛々(りり)しい魚は 遡る
無骨な岩は 水を噛む
魚は岩を いやしめず
岩は魚を おとしめず
青い流れを送り迎え
それがいかにも爽やかだ
流れは 豊かに 大らかに
むしろ卑屈なものたちを
押し流していた 川下へ
押し流していた 川下へ