男声合唱組曲
      尾崎喜八の詩から・第二
  
  田舎のモーツァルト
作詩 尾崎喜八  作曲 多田武彦
  
中学の音楽室でピアノが鳴っている。
  生徒たちは、男も女も
  両手を膝に、目をすえて、
  きらめくような、流れるような、
  音の造形に聴き入っている。
  そとは秋晴れの安曇平(あずみだいら)。
  青い常念と黄ばんだアカシヤ。
  自然にも形成と傾聴のあるこの田舎で、
  新任の若い女の先生が孜々(しし)として
  モーツァルトのみごとなロンドを弾いている。
  
          詩集『田舎のモーツァルト』より